最強無敵のマジなレンアイ by真珠

13.誤解な恋愛

リュミエール様に避けられてる…悲しいことだけど事実だわ。

お召し物を返しにいった時も出てきたのは執事だけ

謁見の間でも下を向いたっきりで、終わるなり逃げるように出ていってしまわれた…。

この世の中がガラガラと崩れ去っていくような絶望を感じながら、私は床に座り込んだきり立ち上がれなかった。

「陛下?おかしいですわ、どうなさったのです?」

振り返ると女王候補の2人とロザリアが顔をくもらせて、こちらを見ていた。

しかたなく私は昨日のことを涙ながらに話した。

「まぁ!そんなことがあったの…。それは、おいしかった…いえ…たいへんだったわね。」

「どうしましょう、ロザリア様?」

「やっぱ、ここは経験を積んで頂かないとダメなんじゃん。」

「そうね…。そんなに奥手でいらしたなんて…。」

…私を助けてくれるんじゃないの?

「アンジェのおばかさん!よく考えてごらんなさい…リュミエール様は恥ずかしがってらっしゃるのよ。

でも…その程度で恥ずかしがられては私達の望む、あんなことやこんなことは夢のまた夢だわ。」

ロザリア…意外と大胆ね…。

「何をニヤニヤしてるの?アンジェだってリュミエール様と、て…手を握ったり、キ…キスしたりしたいでしょう!」

キャ〜いやっと顔を赤くして俯いてしまった3人に私は頭痛がした。

あんなことやこんなことって、その程度のことだったのね…。

私だったら…。

「陛下…?鼻血がでてますわ…あの陛下?」

茶色い髪のアンジェの言葉は私の耳には届かなかった。

私の頭の中は、あんなことやこんなことの妄想で一杯だった。

 

ふとリュミエール様が…と言う言葉に我に返ると3人はパソコンの前で頭をつきあわせていた。

「どうしたの?」

茶色い髪のアンジェが盗聴機を耳から外して探査モニターに繋ぎなおす。

「今日は執務室で溜息ばかりついてらしたのが、部屋をでてルヴァ様の執務室にむかわれたのですわ。」

まだ探知機とか盗聴機は残ってたのね…でも、こういう場合は役に立つからいいか。

「部屋に入られましたわ。」

茶色い髪のアンジェがボリュームを大きくする。

 

「あ〜リュミエール、今日は玉露とぬれせんという珍しいものが手に入りましたよ〜。」

ガサゴソとお茶の用意をする音がする。リュミエール様は無言だわ。

「あ〜どうぞ〜召し上がってみてくださいね〜。」

「ありがとうございます、ルヴァ様。」

「おや〜?どうかしたんですか?元気が無いようですが〜」

ギクッ!ドキドキ…。私のせいでごめんなさい、リュミエール様。

「あの…私…。」

うろたえてらっしゃるわ…シクシク。

「あ〜、なんでも言ってみてくださいね〜。

お役に立つとはかぎりませんけど、話すだけでも気が楽になったりしますからね〜。」

うっうっ…ルヴァ様お優しい。でも沈黙が重いわ…。

それでもリュミエール様は昨日の一件を恥ずかしそうに言いよどみながらもルヴァ様に話した。

「私は失礼だと思いながらも陛下が…。」

「あ〜、やっぱりそうでしたか〜。うんうん。今日のあなたを見ていれば、わかりますよ〜。」

さすがルヴァ様。なんでもわかってらっしゃるのね。

「陛下のことを考えるだけで顔から火が出る思いですし足は震えるし。」

あぁ…やっぱり怯えさせてしまったのね、グスン。

「あ〜それに胸がドキドキするし目が合わせられないのですね〜。」

「こんなふうでは陛下に失礼で申しわけが立ちません。」

お気になさらないで…シクシク…私がわるいんだから。

「あ〜、リュミエール。それはですよ〜」

のほほんとしたルヴァ様の言葉に私達は目が点になった。

「あ〜、その件で多分意識していなかった恋を意識しだしたのですよ〜。

この古文書…ティーンズラブラブ文庫に書いてありますよ〜。」

おいっ!心の中で毒づくと私達は額に青筋をたてて見えないルヴァ様を睨みつけた。

ただ単に恥ずかしがってるだけだってわからないかな〜?

 

恐らくリュミエール様は完全に凍り付いているのだろう、

延々と話し続けるのはルヴァ様でリュミエール様は言葉が無い。

「あ〜私もよくわかりませんけど顔が赤くなったり胸がドキドキするものなのだそうですよ〜。

あぁ…この本のここに書いてありますけど〜中略〜だそうですね〜。

こっちにも関係する記述のあるものが二千冊くらいありますね〜。ふむふむ。

で〜中略〜などによると〜中略〜の事柄から〜以下削除〜。」

あぁ…、こんな方に相談にいってしまうなんて

お可哀想なリュミエール様。

廊下のモニターにしおしおと帰っていく後姿が映っていた。

 

「それじゃあ、決まりだね!」

なにがよ、レイチェル?

「アンジェ!あなたにリュミエール様の恋の経験値UPを命じます。」

女王に命令するの、ロザリア〜。

「どーせ嫌われてるんだから、何やってもOKじゃん適任だよね。

リュミエール様が少し恋愛慣れして皆がアタックしやすくなるように協力してよね。

リュミエール様の前で誓ったじゃん。」

がぁ〜ん。ひどいわ、レイチェル!

「あの〜でも、リュミエール様ってばルヴァ様の言ったこと

けっこう真に受けてらっしゃるみたいですわ。悩んでらっしゃいますわ。」

まだ盗聴していた茶色い髪のアンジェの言葉に驚かされた。

うそ…。なんて真面目な方なの…。

「なんですって!」

「冗談じゃないよ!誤解もいいとこじゃん!」

ロザリアとレイチェルの目がつりあがる。

「あの〜お待ちになって下さいですわ。私達の誓いの宣誓書の中には

一番にリュミエール様の意思を尊重し、それに協力するとあります。

ですから誤解にしろリュミエール様が陛下と仲良くしたいと思われるなら

協力するべきなのではないでしょうか?」

ぐぐぐっとロザリアとレイチェルの拳がふるえる。

「し…しかたがないわね。私もリュミエール様の前で誓った以上どんな場合でも誓いを守りますわ。」

「そーね。本当は嫌われてるじゃん。どーせうまくいきっこないし。

これでリュミエール様が恋愛慣れしてくれれば、本命の私もやりやすくなるもんね。」

2人とも顔が怖いわ…無理しなくて良いのに…。

「頑張って下さいね、陛下。」

茶色い髪のアンジェだけがニッコリと笑った。

 

**** 水鳴琴の庭 ****