最強無敵のマジなレンアイ
by真珠12.そんなつもりじゃなかったの
女王の執務室に戻ると書類が山積みになっていた。
ロザリアと顔を見合わせると、どちらからともなく溜息がもれる。
「とりあえず、なんとかしなきゃね」肩をすくめる私にロザリアは頷いて
山を半分にわけてよこした。
目がサッサッとやっちゃいましょうといってる。
あぁ、本当に気楽な女王候補時代がなつかしいわ〜。
ひたすらペンをはしらせて気がつくと夜中になっていた。
あ〜おなかへった〜。
「ロザリア、食事にしましょう。私もうダメ〜」
うるうるした瞳で泣きつくとロザリアは立ち上がってワゴンを持ってきた。
「陛下、今日はおかかと梅のおむすびとキンピラゴボウですわ。」
「ねー。私、女王って毎日ごーかな食事してると思ってたけど
これじゃあ〆切り前の同人作家ね。」
おかかのおむすびをナイフとフォークで切りながらロザリアはチラリと目をあげた。
「友情のない相手とは出来ない生活ですわ。」
友情あってもしたくないかも…と心の中で思っているとロザリアがワゴンの陰から何かを出した。
「陛下、メンチカツですわ。こっそり実家に頼んで届けてもらいましたから半分コいたしましょう。」
うぅ…ロザリアったら。思わず抱きつくとロザリアは絹のハンカチで涙をふいてくれた。
「民の血税で守護聖様達に贅沢させてるんですもの。できるだけ切り詰めなくてはね。
でもダイエットにもなってよ、アンジェリーク。」
そ…そうかしら?バランス悪い気がするけど…。
「毎食、フルコース食べて御覧なさい。たちまちブーブーアンジェよ」
そーか、フルコース食べるよりはカロリー低いかも♪
「守護聖様に年金も出さなくちゃならないし、宮殿の修繕費や王立派遣軍や研究員のお給料etc
家計簿は真っ赤っかよ。」
あううぅ、女王って厳しい…。
結局、仕事が終わったのは明け方だった、今日さぼったつけとはいえトホホだわ。
翌日は土の曜日で寝ようかと思ったけど、せっかく仕事がないんだしレイチェルのパソコンをのぞきにいくと
きゃーラッキー!リュミエール様の今日の行動は、ほぼ森の湖で絵を描くね♪
行ってみよっと♪
湖に着いてあたりを見まわして気がついた。
あれっ?私ひとりだわ…。
そっか、女王候補達は視察だしロザリアはジュリアス様に書類のことで呼び出されてるから…。
まあ、いいか。どのみち目の下クマでお会いするつもりないし覗くだけだもの。
「陛下?」
綺麗な声に飛び上がった。
「きゃああああああああ〜!」
あぁ、振り返ると私の大声に驚いた顔のリュミエール様。ど…どうしよう!
で…でも、もう悲しませないって決めたんだもの!
震える膝ををこらえて一生懸命いいわけをする。
「ご…ごめんなさい。誰もいないと思ってたんです。」
リュミエール様はニッコリと微笑んで、首をふった。
「いいえ、私こそいきなり声をかけて申し訳ありませんでした。」
ホッ…。うまくいいわけできたみたい。
「あの…絵を描きにいらしたんですか?」
やわらかな木漏れ日を浴びた水色の髪がゆれる。
「ええ。陛下は?」
ギックゥ!まさか、はってたなんて言えないし。
「えへへへ。」笑ってごまかしちゃおっと。
と思ったらリュミエール様の聖なる輝きを帯びた白い指がのびてきて私の頬にふれた。
ぎゃい〜ん。辛うじて心の中だけで叫び声を留めて固まった私の瞳を
リュミエール様が深い海色の瞳で覗き込む。
「ご無理をされているのではありませんか?自由になる時間も少ない激務だと聞いております。」
いや、まぁ、そうかも…でも…一番つらいのは…リュミエール様のお顔が見れないこと…お話できないこと…
あがってカチンコチンになっちゃうけど…それでも、すぐ傍にいるのに…。
想った途端に涙が出てきて止まらなくなってしまった。
傍にいたい気持ちのままにリュミエール様に抱きつくと守るように回された腕に抱かれて幸せのあまり
ますます涙が止まらなくなってしまった。
ひとしきり泣いて、ふと気がついて顔をあげると…ぎゃひぃ〜ん…涙でリュミエール様のお召し物が…。
「きゃあああああ〜ごめんなさい。お召し物が〜。」
後になって考えると洗ってお返ししようと思ったのだと思う。
私はショックのあまり思わず渾身の力をこめてリュミエール様のお召し物を剥ぎ取っていた。
白いお召し物の下は指先よりも白く聖なる輝きに包まれていて、
最初のショックも忘れて私は思わず声もなく見入ってしまった。
リュミエール様もよほど驚かれたのか呆然となさっていて動けない。
白い肩に水色の髪がながれ薄手のチュニックの下着の胸元が驚きに上下して
神の奇跡としか言いようもない美しい鎖骨の線がみえる。
ゆるやかな服ごしにさえ、綺麗にしまった腰の線がわかり…はううう…そのうえ、御御足が〜!!。
チュニックはスソが長いものだけど動きやすさを考えてか左右にスリットがあって、
そこからほっそりとした美しい足が…透き通るように白く輝いて…
膝の形の美しさなんてマニアックなものに目覚めてしまいそう…。
私は思わず鼻血をふきそうになって慌てて口元を押さえた。
その動きに我に返ったのかリュミエール様の身体が一気に桜色に染まったかと思うと
あの落ち付いた風情の礼儀正しい方が「失礼します」の言葉もそこそこに
風のように逃げ去っていった。
走り去るリュミエール様の稀有な後姿を見送って、
ニマニマと緩んだ頬を叩きながら心底まずいなと私は思った。
**** 水鳴琴の庭 ****