最強無敵のマジなレンアイ by真珠

10.GOOD FRIEND

寝室から出るとロザリア達は私の部屋で、お茶を飲んでいた。

「アンジェ、どうしたの?」ロザリアが心配そうな顔で駆け寄ってくる。

「陛下…リュミエール様の3D映像みます?」茶色い髪のアンジェリークがディスクを取り出す。

「陛下ってばらしくないマジな顔しちゃって、しっかりして!」レイチェルがキツイ言葉で励ます。

みんな、やさしいな。私より、ずっとリュミエール様にふさわしいわ。

座り込んで泣きじゃくる私の頭にロザリアの錫杖が降ってきた。

「はっきりと言いなさい、アンジェリーク!」

こいつ除外だわ。全然優しくない。

私は痛む頭に手をあててロザリアをにらんだ。

「それが泣いてる人間にする仕打ち?」

「だって、あなたったら何も話してくれないんですもの。」

ロザリアの瞳がうるむ。これじゃあ、どっちが殴ったんだかわかりゃしない。

「あ〜らら、陛下ったら補佐官な〜かした♪」

「レイチェルったら、そんなこと言ったら陛下がお困りになられるわ…」

つられたのか半ベソのアンジェリークの頭をレイチェルの手がなでる。

「大丈夫よ♪ワタシが女王になってもアンジェは親友だもん、泣かしたりしないからね。」

むかっ。言い返そうとした私は部屋のスミに突き飛ばされた。

「私と陛下だって親友…いいえ!大親友ですわ!そうでしょう、アンジェ?!」

うむを言わせない迫力にコクコクと頷く。

もう、ロザリアったら負けず嫌いなんだから…。

 

思わず吹き出したらロザリアとレイチェルはお互いにファインティングポーズをといて笑った。

「やっと笑ったわね。」「死にそうな顔の陛下なんて、イケてないよ。」「心配いたしますわ。」

随分と荒っぽい心遣いだけど今の私にはありがたい。

「だって…」私は自分が気が付いた死ぬほど悲しい事実をはなした。

ポカリ、ロザリアの錫杖が再び私の頭を直撃する。

「ちょっと!かりにも女王の頭を何回も…」

「あいかわらずアンジェリークったらオバカさんね。」言いながら瞳は優しい。

「違うよ、チョーおばかってかんじーキャハハハハ。」レイチェルも。

茶色い髪のアンジェは近づいて来ると私の手を両手で包み込むようにとった。

「陛下…リュミエール様にふさわしい…チョーウルトラスペシャルギガマックス特上なレディなんて

この世にいませんですわ。」

彼女の背後に燃える炎が見える。

「ロザリア様だってタカビーですし、レイチェルだってガングロです。」

そ…そこまで言う?

「だからこそ、努力が必要なのですわ!さあ、未来の為に!求む君の若い力ですわ!」

自衛隊…もとい王立派遣軍の求人ポスターみたいね。

「陛下!明日のチョーウルトラスペシャルギガマックス特上なレディを目指して

頑張るのですわ〜♪」

ロザリアとレイチェルが服を脱ぐと私と同じような怪しげギブスが付いていた。

「アンジェ!こんなことで挫けてはダメよ!私達は親友だけどライバルでもあるはずよ!」

「まあ、せいぜい頑張ってみてよ。でも最後に笑うのはワタシだよ。」

もう、皆いい奴なんだから!でも…でも…負けないわ。

「みんなで素敵な女の子になろう!少しでもリュミエール様にふさわしい女の子に近づくように頑張ろう!」

「陛下!ご立派ですわ♪」拍手する茶色い髪のアンジェ。

私は彼女の方にクルリとふりかえった。

「あなたもよ、アンジェリーク。」

慌てる彼女。

「わ…私、私は…。」

「好き…ううん、愛してるんでしょう?リュミエール様を。

ごめんなさい、辛かったよね私の為に色々するの。それなのに…あんなに一生懸命…ありがとう。」

彼女の大きな瞳から涙がこぼれおちた。

「陛下ぁ〜。」

抱き付いてきた彼女の背中をレイチェルが、そっと

羽交い締めにする。

ロザリアと私は彼女の全身をチェックする。

まず小刀…隠し撮り用の小型カメラ…けむり玉…盗聴機…

「リュミエール様にふさわしい女の子に近づく為にも、みんな没収します。」

「そんなぁ、忍びにとっては裸と同じですわ。小刀だけでも…。」

ロザリアの厳しい声が一喝する。

「ダメです。すべてお出しなさい!だいたいチェックのきびしい聖地に、よくこんなに持ち込めたものね。」

茶色い髪のアンジェリークは襟の裏から針と数種類の薬をはずした。

袖からはヌンチャクと組み立て式の刺股、絞殺用のテグスがでてきた。

リボンは形状記憶合金でブレードに変化するものだった。

靴にはナイフと破壊工作用の爆弾etc。

「これで全部?」いささか呆れながら聞くと彼女は恥じらいながら服を脱いだ。

裏には得体のしれないコードや薬、多種多様な形状の刃物、用途不明の機械が

びっしりと付けられた小さなポケットに収められていた。

「も…もう、ないわね?」

「ううん。まだ、あるはずだよ。だしなよ、アンジェ。」親友の追及は容赦ない。

口の中から歯をはずすと薬と通信機が、爪の間から薬品の塗られた針がでてきた。

「これで全部ですわ、たぶん。自分でも忘れてるのとかあるかもしれませんけど。」

茶色い髪のアンジェは落ち着かない様子で小刀を執拗に見つめている。

「あぁ…物心つく前からナイフや薬を身につけていなかった事はないのに

体がスカスカで、なんだか寂しいですわ。」

どういう家庭で育ったんだろう…頭いたい…。

 

**** 水鳴琴の庭 ****