最強無敵のマジなレンアイ by真珠

3.聖地緊急事態

早朝4:00守護聖・教官・協力者・女王候補達に緊急招集がかけられた。

オリヴィエが睡眠不足による美容への影響を気にしながら謁見室に入ると

みな不安そうな面持ちで集まり無言で女王の現れるのを待ち、

ひときわ高い壇上に視線を注いでいる。

 

最初にキレたのはゼフェルだった。

「なんだよ!。招集かけといて説明もなしかよ。やってらんねぇぜ。」

「同感だね。僕は帰るよ。」セイランが立ち去ろうとした時、ジュリアスがやっと口を開いた。

「聖地の危機なのだ。勝手な事はゆるさん。」

「へぇ〜。じゃあ、ジュリアス様は何が起きているのか知ってるんですね?。」

セイランの言葉にハッとして皆の視線がジュリアスに集まる。

ゼフェルが口を開こうとした瞬間、オスカーが押しとどめて自らジュリアスに尋ねた。

「まだ未確認の情報なのですね。」

さすがのジュリアスも腹心の言葉には答える。

「そうだ。未確認の情報で動揺するのは危険だ。だから言えないのだ。」

なんとか、それでも情報を聞き出そうと皆が知恵を巡らせている時

とぼけた声が緊迫の状況を打ち破った。

「でっもー、陛下ってば誘拐されちゃったんでしょう?早く言っても遅く言っても

かわんないんじゃなーいー?キャハハハハ。」

「レ・・・レイチェルぅ。ダメよ。ロザリア様がいわないでって・・・。

あぁ、皆様。リュミエール様が救出に向かってらっしゃるそうですから

あまり、ご心配なさらないで下さい。」

女王候補達の可愛らしいつつきあいも、オリヴィエがアンジェリークをそそのかした?ばかりに

起こしてしまった大事件の衝撃を和らげる事はできなかった。

オリヴィエはアンジェリークの意図を察し心底後悔し、

他の面々は一瞬にして沸点まで殺気立った。

誰にも負けずに怒りをほとばしらせジュリアスがしゃべりだす。

「そうなのだ、あの優雅で聡明・気高い陛下が(うっとり)・・・誘拐され

居合わせたリュミエールが救出の為に後を追ってると言う話だ。」

オスカーがいきりたつ。

「あいつが役に立つわけありません!。俺に追わせて下さい。

ああ、陛下の悩ましい魅惑の唇と背筋をかける濡れた瞳の星にかけて

俺が陛下をお助けします。」

「だが、どこへ行ったかわからないのだ。リュミエールから連絡さえ入れば・・・。」

私が行く、ジュリアスの瞳はそう言っていた。

動けない一同は行き場のない怒りで煮詰まっていく。

「がさつだけどよぉ。根性あるし俺は心配なんかしてねぇからな。」

言うゼフェルは貧乏ゆすりしている。

「あー、誰の事をいってるんですかー?

それより向学心に満ちた繊細な観察力と優しさのある陛下が心配ですねぇ。」

「大丈夫ですよ!陛下の蹴りは破壊力ばつぐんだし、力も強いし足も速いし。」

おっとりとしたルヴァも爽やかに笑うランディもお互いにイメージの食い違いに気づかない。

それは泣きじゃくるマルセルも

何か瞑想して自分の世界に入ってしまっているクラヴィスも同じだろう。

オリヴィエは心の中でため息をついた。

ふと見ると教官・協力者達も例外ではないらしく

皆、目を潤ませたり考え込んだり泣きまくったりしている。

しらけてるのは女王候補達ばかりだ。

オリヴィエはつつっと2人の側に寄った。

「さっきの話、信憑性あるの?。」

レイチェルがニッと笑う。

「へぇ〜、オリヴィエ様。正気なんだー。男の人ってみーんな陛下にメロメロかと思ったのに。」

茶髪のアンジェリークの大きな瞳が涙でふるえる。

「リュミエール様だって正気でいらっしゃるわ。」

「あったりまえじゃない!だってリュミエール様なんだよっ、当然よ。」

頬を染めてウットリモードに入った2人をオリヴィエは咳払いをして呼び戻す。

「あ、まだいたんだ。オリヴィエ様。」

「わるかったわねぇ。で、信憑性は?。」

いささかムッとして尋ねるとレイチェルは少し考え込んで答えた。

「どうかな?悪いけど陛下って遊び人だよ。

今回の事だって皆様の気を引くための茶番じゃない?

あぁ、リュミエール様のかもしれないわ!あの女ぁ〜。」

的を射た言葉にオリヴィエはあせったがレイチェルは気づかず続ける。

「だいたい本当に皆様のこと好きだしステキだって思ったまま言ってるって言ってたけど

結果的に男の人を夢中にさせてさ。誰も彼もカレシみたいに思ってるみたいじゃない?

女のアタシからみれば、オスカー様とおんなじだよ。」

「待ってぇ、レイチェル。」少し間延びした声で茶髪のアンジェリークがとめる。

「あ・・・あのね。でも女王陛下だから皆様に愛されるようでないと・・・えーと・・・

それで、あんな風になさってるのかもぉ?。」

「限度ってモンがあるよ。聞いたでしょう?皆様に歯の浮くようなお世辞言ってさ。

ジュリアス様でさえ貴方の高潔な魂はどうのこうのとか、

どんな黄金より貴い髪がどうこう言われて髪にキスされたら真っ赤っかになってさ。」

その言葉はオリヴィエにとって脳天直撃の衝撃だった。

男の自分には所詮みえないアンジェリークの真実の姿をかいまみたような・・・。

「あ・・・あのね。でも、それは廃業したんだよ。これからは違うから見てやってよ。」

オリヴィエの言葉にレイチェルの不信の眼差しが突き刺さる。

「ふ〜ん。そっかなぁ?オリヴィエ様も本当は惑わされてるクチじゃないのぉ?。」

30秒ほど考え込んでしまったがオリヴィエはアンジェリークを信じた。

「本当に変わったのよ。マジにレンアイしてるからね。」

 

**** 水鳴琴の庭 ****