異世界の女王試験2- by真珠

-ネコにはネコを-

私とロザリアは颯爽とネコ耳としっぽを付けて守護園児様たちの前に現れた。

「にゃ?」かわいく首をかしげてリュミエール様もお気に召してくださったみたい。

成功ね。

「私達の可愛さをリュミエール様もわかってくださったのね。」

瞳をうるませる私にロザリアは情け容赦ないツッコミをいれる。

「このネコしっぽにじゃれているだけですわ。おバカなアンジェ。」

き〜っ。いいじゃない!うけているんだもの!

それに、無邪気にゴロゴロしてるお姿はむちゃくちゃカワイイ〜っ。

「にゃ♪にゃ♪」

喜んでる喜んでる〜。う〜幸せ〜。

クリクリとした瞳がしっぽの動きに合わせて動き回り

おひげが偽物のネコしっぽにツンツンむいてる〜。

かわいすぎ〜。

「うふふふ…同じネコしっぽでも、私のがお気に召したみたいね。」

私が勝ち誇って言うとロザリアは悔しげにそっぽをむいた。

「そんなことで喜ぶなんて、おめでたい子ね。」

 

「まて!まちゅのだ!このジュリアスなら超豪華絢爛待遇間違えなちなのだ!

私がリュミエールを飼うぞ。」

あ…なんて強引なの〜せっかくじゃれていたリュミエール様を

ジュリアス様がいきなり抱き上げてしまった。

「ふ…リュミエールはキンキラのお皿や尾頭付きのお魚さんは嫌いだ…。

私が飼う…。」

闇と光が睨み合う中キョトンとしたリュミエール様を横から出た手がつかんだ。

「も〜らいっと。リュミエールはケンカは嫌いなのよん。私が美ちく飾ってあげるね〜。」

オリヴィエ様がリュミエール様のほっぺにチュとキスすると

周囲から不満の声があがった。

「それを言うなら、ゴテゴテ飾るのも嫌いだと思うぞ!」

「はははっ!俺にも抱かせてくだちゃいよ。」

「けっ、くだらねぇ。ネコの自由にちてやれよ。」

「とかいいながらゼフェル〜、ボクのまたたび取らないでよ。」

お子様のエゴと物欲が交差する。

だが気持ちは私達も同じ。

「いいこと、アンジェ。ここは…」

ロザリアの言葉にうなずいて続ける。

「実力行使ね。」

2人で微笑みあうと握りこぶしを作った。

ディア様の怖い目はないし…ガキなんて所詮は大人の腕力の敵ではない。

女王にも選ばれたくないし、これで嫌われれば一石二鳥。

 

上からひょいっとリュミエール様を摘み上げると

ロザリアにパス、お子様たちがダダダッと

そっちへたかる隙に以前も使ったお子様を閉じ込めておくサークル

というと聞こえが良いが、つまりは天井のない檻で囲うと扉を閉めた。

ロザリアは私に、リュミエール様を投げ返すとサークルの檻を

身軽に飛び越えてランディ様も脱走できないように上から網をかけた。

そして私達は呆然とする守護園児様達を後に保育室から逃げ出した。

「きゃ〜やったわね。ロザリア。」

「えぇ、あなたもなかなか役に立つわね。」

2人でリュミエール様をなでるとゴロゴロとかわいく喉が鳴る。

見上げてくる瞳だけで、もう心はメロメロ。

「ねえ、ねえ、こっそり聖地園なんてふけちゃおうよ。」

「ふ…ふける…せめて抜け出すとかおいいなさい。下品よ。」

「ロザリアだって意味は知ってるくせに〜ともかく行こ行こ。」

私達が以前ゼフェル様を探している時に発見した聖地園の壁の大穴につくと

そこに、輝く光を背負った人影が…背後から光が差しているため

顔はわからないが私達はガックリと膝をつくとリュミエール様を差し出した。

「ほほほ…よい覚悟ね。アンジェリーク、ロザリア。」

声を聞いて、やっぱりと思った…ディア様だった。

ディア様は愛しげにリュミエール様を抱くと、何故かひどく青ざめたルヴァ様をつっついた。

「ルヴァ様お願いします。」

優しい声なのに有無を言わさぬ響きがあった。

ビクッとしたルヴァ様がおどおどとしながら薬を取り出してリュミエール様に飲ますと

見る間にリュミエール様は元の姿に戻った。

「あ〜ネコも可愛くて良いのですがね〜。」

ディア様が音がでそうな勢いでにらむとルヴァ様はカメのように首をすくめて縮こまった。

そんなディア様でさえもリュミエール様がディア様の足元で首をかしげ

「ディアさま?」かわいらしい声で言うと滝のように感涙し

感極まったように抱き上げると頬ずりしながら抱きしめた。

「あぁ…ネコもいいのですが、やはりこうしてお声を聞けませんとね。」

悔しいけど納得してしまう。

きゅっと抱きついてきてアンジェ先生なんて見上げながら言われてしまうと

こう胸がきゅ〜んとなっちゃうのよね。

そして抱っこすると良い香りがしてたまらなくかわいいの。

「さぁ、保育室に帰りましょうね〜。」ディア様が歩き出すと

ふけるなんて考えられなくなった私とロザリアもフラフラとついて歩き出した。

 

保育室に帰るとブーイングよりも元に戻ったリュミエール様を喜ぶ声が沸きあがった。

サークルから出すとみんなネコだった時の印象が消えないのか

リュミエール様のまわりにドッと集まって大人気。

ジュリアス様は何とか関心をかいたくて回りをウロウロし

ルヴァ様はおせんべいを持ってきてリュミエール様を眺めながらお茶してるし

無関心を装いながらクラヴィス様の水晶球にはリュミエール様が映っているし

ランディ様はフリスビーはともかく鉄アレイなんて見当はずれな物をプレゼントするし

オスカー様はわけのわからないことを言ってからんで、みんなに怒られているし

マルセル様がお花を差し上げたり、オリヴィエ様が自慢のリボンで髪を編みたがったり

ゼフェル様がおもちゃのピアノを弾いて欲しいとねだったりとモテモテ。

あぁ…私達の入りこむ間がないわ。

でも守護園児様達の様子は、なかなか微笑まくて嬉しい。

「はっ!」私とロザリアは同じことを考えて顔を見合わせた。

もしかして…私たち保母化してるぅ〜?ショックで目の前が真っ白になった。

 

続く

**** 水鳴琴の庭 金の弦 ****