異世界の女王試験2- by真珠

-かわいすぎて大騒ぎ-

そんなに急に熱がひくわけもなく眠りつづけるリュミエール様にあきたのか

みんなおもいおもいのカッコで寝てしまった。

日溜りの中の平和なひととき…皆が天使に見える。

 

キラリ。日差しの中で何かが光った。

ルヴァ様の執務机の横に落ちているのは小さな瓶で「お子様用熱さまし」とかいてあった。

なんだ。良いものがあるんじゃない。

そういえば、さっきピタくーるを出した時に救急箱から、なにか転げ落ちたような気がしたのよね。

私はロザリアと目配せし合って物音を立てないように水をくみにいった。

「一度おきていただくしかないわね。」ロザリアはそういうとリュミエール様にそっと声をかけた。

長いまつげがゆれて綺麗に清んだ海色の瞳が不思議そうに開かれる。

「お熱がでているようですから、お薬を飲んでくださいね。」

いやがったらどうしようと思ったけど、うなずくと素直に飲んでくださった。

 

…!

私達の顔が驚愕にひきつった。

薬を飲んだリュミエール様の耳がネコのような耳になり、白くて長い可愛らしいシッポが…!

「にゃ?」

無邪気な瞳で身体をすりよせてくる…。

か…かわいい!!!じゃなくて、どうしよう…?。

思わず抱き上げてダッシュで逃げようとした私の足にロザリアがスライディングタックルをかました。

すんでのところでリュミエール様をケガさせないように抱えあげると

ロザリアはその隙に私の手から奪って

何時の間に呼び寄せたのか自家用ヘリに飛び乗る。

「ロザリア!なんてことをするのよ!!」

「おーほっほっほっ。あなただって連れて逃げようとしたくせに!

だけど最後に勝つのは金持ちなのよ。じゃ、ごめんあそばせ〜。おーほっほっほっ。」

遠くなるヘリと高笑いに悔し涙がとまらない。

 

「まあ、ロザリアったらチョメですわ♪」

何時の間にか隣にディア様がいらして錫杖を槍のように投げつけていた。

ちゅど〜ん。

とめる間もなく(とめないけど)ロザリアのヘリは撃墜され

ほほほほほっと笑いながら優美に疾走するディア様(なぜかこわい)

リュミエール様は無事キャッチされた。

キラリと輝く錫杖を右手に可愛らしいリュミエール様を左手に抱いて聖母のように微笑み

しとやかな立ち姿に夕日を背負ったディア様の迫力に

ロザリアは完全に腰を抜かしていた。

年期の差なのだろうか…。

「アンジェリーク?なにか言いましたか?」

優しく訊ねられているのに、思わず飛びあがってフルフルと首をふる。

「そう…ならよいのです。このたびのアクシデントは貴方達の手にはあまるもの。

守護園児様方のお力をお借りする必要があるでしょう。」

 

というわけで、叩き起こされた気の毒な守護園児様方は

ネコ化したリュミエール様に大騒ぎになった。

「わ〜♪リュミエールちゃま、かわいいよ〜♪」

感激の涙にくれながらマルセル様はリュミエール様に抱きついて離れない。

ネコ好きのクラヴィス様もゼフェル様もクールを装いつつソワソワしている。

ジュリアス様は守護園児がネコになるとは何事だとお説教を続けつつも背中を撫でいるし

ランディ様は驚いてバクテンして続けている。

オリヴィエ様はリボンや鈴で飾り立て続け

ルヴァ様は…???

「どこへ行くんですか?」

こっそりと部屋から抜け出そうとしたルヴァ様の服のすそを

ディア様の錫杖が床に押さえつける。

ベチャと見事に転んだ後もジタバタとカメのようにもがいていたルヴァ様も

私達に囲まれて観念した。

「あ〜ちゅいまちぇん。あの薬を飲んじゃうなんて思わなくて…確かにポケットに入れておいたち…」

そういってルヴァ様がポケットを引っ張り出すと、そこには大きな穴が開いていた。

「なんで熱さましの薬の瓶になんて入れておいたんです?せめてラベルを剥がすとか…。」

「あ〜そうでしゅね〜それは気がつきませんでちたね〜うんうん。」

知恵を司る方じゃなかったかしら、この方ったら。

 

不毛な会話をしてるうちに騒ぎは起こっていた。

リュミエール様のとりっこで物が飛び交っている。

「おやめなさ〜い!」ディア様の一声でピタリと止まる。

さすが年期…あわわ。

「なかよく遊ぶのですよ。今ルヴァ様に元に戻るお薬を作ってもらいますからね。」

ディア様は優しく諭しているのに皆は顔をこわばらせてコクコク頷くだけ

よくわかってるのね…。

「アンジェ?」

「は…はい〜っ?!」慌てて声が裏返ってしまう。

「私はルヴァ様にお薬を作っていただきます。

その間、ロザリアも協力して皆様のお世話をして下さいね。」

特上の微笑をたたえながらルヴァ様の首根っこを掴み持ち上げると

ディア様は部屋から出て行かれた。

 

「にゃ?」脱力した一同の真中でリュミエール様がくびをかしげている。

か…かわいい♪

見つめる目はどれもライバルだった。

ジュリアス様が懐から黄金のねこじゃらしを覗かせる。

クラヴィス様の漆黒だ。

マルセル様は本物のねこじゃらし(えのころぐさ)

ゼフェル様はメカねずみ。

オリヴィエ様はまたたびの粉。

オスカー様はメス猫。

ランディ様はバクテンで自らねこじゃらしのように動いている。

どれも手強そう…だけど負けられない。

私とロザリアは頷きあった。

今こそ友情パワーでリュミエール様をゲットよ!。

 

続く

**** 水鳴琴の庭 金の弦 ****