剣士の憂鬱 その1  by真珠

 

ご注意…アリオスにとってハッピーエンドですが、

彼のキャラクターが大幅に壊れております。

 

俺はアリオス。流浪の剣士だ。

もっとも、お前も俺が実は皇帝レヴィアスだってことは知ってるだろう。

だがな…ここのところ俺はレヴィアスではなくアリオスとして生きたい…

そう思っている自分に気がついたんだ。

バカな話だろう?そんなこと出来るわけがない…それなのに。

それというのも、多分あいつらと旅をして…おっと噂をすればだ。

 

「アリオスさん!」大きな瞳を輝かせて緑の守護聖が飛びついてくる。

「何ひとりごと言ってたんですか?僕とっても心配だな。」

そうかい、そうかい。

「あ〜、マルセル。アリオスをソッとしておいてあげてくださいね。

何か悩みがあるようです。まわりが騒いでは可哀想ですからね〜。」

地の守護聖が人の良さそうな顔で微笑みながら言う…

けど、本人の前で言うか?普通。

「なにか悩みがあるんですか、アリオスさん。

僕では、何かお役に立てませんでしょうか?。」

真顔の王子様の言葉に白くなるほど握った拳が震える。

こいつら〜誰のせいだと思ってるんだぁあああ!

はあ、はあ、いや、こいつらは何も知らないんだ。

知らないから…そこまで考えて背筋が寒くなる…。

もし、知ったら…?

背後の奴等の顔が意地悪く笑った気がして慌てて振り返ると

3人は怪訝そうな顔で俺を見た。

俺はこの年齢になるまで、まさか自分がこんなに小心だとは思わなかった。

激しい精神的な疲れを感じた。

俺はアリオス。流浪の剣士だ。

しかし、その実体は皇帝レヴィアス…。

だが俺はレヴィアスではなくアリオスとして生きたい

こいつらと旅をして、つくづくそう思う。

「悪いな、独りにしてくれ…。」

「大丈夫、アリオスさん?。」

「なにか、お役に立てることがありましたら言って下さいね。」

「あ〜、お大事に。」

俺は体の震えを押さえて手を振り3人を追い払った。

あいつらは旅のメンバーの中でもレベル上げが最後になった奴等だ。

それでも、凶悪なことにレベルは95〜98ある。

もし…もしだ。あいつらが信じきっている俺が皇帝だと知ったら?

裏切られていたと知ったら…俺は流れる涙を止められなかった。

なまじ信じきってるだけに、その怒りは大きいだろう。

ドキドキと動悸があがり、冷や汗がドッと流れる。

胃がキリキリと痛む。

そんな事は出来はしないのに、やめときゃよかった…らしくもない弱音が頭をよぎる。

俺はアリオス。流浪の剣士。

しかし、その実体は皇帝レヴィアス…。

だが俺はレヴィアスではなくアリオスとして生きたい

今は痛切に、そう思う。

  

 

**** 水鳴琴の庭 銀の弦 ****