天才少女が行く 水色真珠 

きゃははははっ、ワタシはレイチェル。

ワタシって天才だから。ま、女王になるのはワタシだけど、アナタもせいぜい頑張ってよね!

 

だいたい、そう言われて「はぁ、よろしくお願いします」って

ニコニコ頭を下げるようなサエナイ子がライバルなんて。

あーぁ、楽すぎてツマンナイ。

あんなツマンナさそうな子と絶対仲良くなんてなれそうにない。

どこにいっても天才と賞賛されてきたワタシに競争心むきだしできた人間が随分いたけど

そういう人間でさえ天才のワタシの競争相手にもなりはしなかった。

ましてや、あの子じゃライバルになりっこない。

お互いを高めあうステキな友達…現女王陛下と補佐官の話を聞いて期待してたんだけどな。

まぁ、ワタシって天才だし強すぎるからね。

しかたないわね。

 

あの時まで、そう思っていた。あの時まで…。

 

最初に紹介された時、驚いた。

守護聖様も教官の方々も皆、見た事も無いくらいステキな方々ばかりだった。

だけど、あの方はワタシの心に欠けている何かをもっている方。

心の奥底で何かが目覚めるような響きをもった名前…リュミエール様。

昔読んだ童話の中の眠り姫が目を覚ますようにワタシは、あの方に…多分あの時…恋をした。

知れば知るほど惹かれていった。

その優しさと強さ慈愛に満ちた気高い魂。心も姿も優美で繊細、柔軟で凛とした人。

 

優しいだけではない、私が天才を自慢した時も決して嫌悪や怒りを表すことはなかったが

悲しげな表情で…だけどハッキリと諌めた。

私の心の中で、リュミエール様の存在が何より重たくなった。

 

でもワタシは天才だからね。恋も両立できちゃう。

試験もリュミエール様の心もワタシのもの…のはずだった…でも、天才も過ちをおかすものらしい…

全てはワタシの思惑から外れていった。

 

育成も順調、リュミエール様との親密度もあがってきた。

ワタシって天才だから当然かーなんて思ってた矢先だった。

あのサエナイ子に育成が追い抜かされリュミエール様との親密度もあがらないどころか

さがってきていた!

育成なんて、すぐ追いつく。それよりリュミエール様…なんで毎日お話してるのに下がっていくの?。

思い切って一日つぶす覚悟で滝にお祈りした。

 

そして、首尾は上々。楽しく森の湖でお話していた時だった。

アンジェリーク?思う間に、あの子は近づいてきた。

「リュミエール様、日の曜日の約束、忘れないでくださいね。」

あの子が、そう言った瞬間すべてがわかった。親密度が下がり出したのは…!。

そして冷静だったはずの天才のワタシの頭は真っ白になっていた。

「なぁんか、図々しくなーい?ワタシの前で、よくそんなコト言えるね!

アナタなんか、リュミエール様とはゼンゼン釣り合ってないよ。ヘンなのっ。

少し試験でリードしてるからってイイ気になってない?

ワタシは…ワタシは負けないんだから…。」

思いっきりまくしたててしまった…ワタシが…ワタシが?

天才…誰も足元にもよれない…何でも出来る強いワタシの心が泣いた。

大切な愛しい人を奪われる恐怖におびえた。

何時の間にかワタシの目から涙がこぼれて止まらなくなっていた。

ふと、前を見るとアンジェリークもボロボロないていた。

「ごめんなさい、レイチェル。だってレイチェルは何でも出来るし

絶対かなわないっておもったら不安で、せめて約束を確かめておきたくて…」

二人の肩にリュミエール様の綺麗な細い手がおかれて、ハッとした。

みっともない醜いところを、この美しい人に見せてしまった!

思わずアンジェとお互いにお互いの手を取り合うと

天上の神も称えるであろう美しい声がふってきた。

「今、同じ心が共鳴しあっていませんか?」

アンジェの顔を見る、ワタシの顔をアンジェが見る。

心配そうに上から見守る水色の輝きを放つ髪に縁取られた、天使の面は深く胸に染み入る。

「試験の大変さは私になど計り知れませんでしょう。

でも…だからこそ同じ想いを共有できる、ただ一人の相手であるお互いを大切にして欲しいのです。

競い合うだけでは真の友にもライバルにもなれないのではないでしょうか?

同じ試験の辛さ苦しみを共有する思い、楽しさ喜びに響き合う心を

大切にしいただきたいのですが、おわかりいただけますか?」

自分を取り合っての俗事だとは気づいていないのだと知って、

アンジェも私もホッとすると共に無垢で純粋な心にも愛おしさが込み上げる。

 

かなわないなって思った、もちろんアンジェじゃないリュミエール様だ。

ゼンゼン足りない今のワタシじゃ、ワタシ達じゃ。

アンジェリークも同じだって。あれからワタシはアンジェリークと仲良くなった。

色んな話をするようになった。

そのうちオドオドしてトロくみえるアンジェリークが意外に着実でしっかり者なのに気がついた。

あなどれないね。奥が深いじゃん。

ワタシはちょっと大人になった。すこーし物が見えてきた。

天才って目隠しを取ってサイコーの女の子になる、リュミエール様に釣り合うような。

だからアンジェリークは大好きな友達だけど、やっぱりライバル。

お互いに本気、真剣な思いだから負けられない。

 

今日も一緒に朝食をとると一緒に出かけた。

ステキな女の子になろう!競争だヨ。

 

その時、女王も自然と決まるんじゃないかな。

だってステキな女の子が女王になった方が絶対ステキな宇宙になるヨ。

ふふっ、でも2人ともステキで、その2人が力を合わせられたら

もっとステキな宇宙になるよね、きっと。

 

仲良しで行こう!

ステキな女の子になろう!競争だヨ!!。

 

でも、こっそり言うけど女王はゆずってもイイナ。けど恋はゆずらないヨ。

これ以上、ワタシにとってステキな人はモウいないから。

ライバルで行こう!

 

全部の宇宙を集めても、一番愛しい人のために。

 

おわり

**** 水鳴琴の庭 金の弦 ****