私のベビー(3) 水色 真珠

「それじゃあ、リュミエール様は元に戻るの?」

アンジェリークは、ホッとしてロザリアをみた。

ロザリアは女王らしい威厳に満ちた表情で頷いた。

「えぇ、水のサクリアが送れなくて困り果ててたから、すぐにでも処置したいのだけど。」

アンジェリークもニッコリ微笑んで頷いた。

このところ夫はすっかりリュミエールに夢中でアンジェリークはほっぽりっぱなしにされてるのだ。

アンジェリークだって、あんなに可愛らしいのだから一緒に遊んだり寝顔を眺めたりしたいのに

さわらせてもくれないし不満で一杯だ。

だから勝手な話だが元に戻ってくれれば夫は自分の方に戻ってきてくれるはずだしバンバンザイなのだ。

 

アンジェリークがリュミエールを連れにいくと

夫は顔色を変えて5才ばかりになっているリュミエールを抱きしめていやいやする。

「ワガママはダメです。水のサクリアが送れなくて困ってるんですよ。」

「だって、ここまで育てたんだぜ。それが、また可愛くない奴に戻るのは嫌だ〜。

もう、言葉もわかるしサクリアを送るように教えるから・・・。」

「ダメです。」

ほっておかれた思い満載のアンジェリークは容赦がない。

「陛下のお言葉ですから!。」

夫はガックリとうなだれると、なごり惜しそうにリュミエールの手を握ると男泣きした。

内心、良心の痛みを感じながらアンジェリークは小さなリュミエールの手を引いて宮殿に向かった、

すっかり、しょげかえったオスカーの後ろ姿をあとに。

 

後日、すっかり元に戻ったリュミエールには小さかった時の記憶はなくオスカーは落ち込みまくった。

それでオスカーがアンジェリークに甘えまくるのは嬉しい誤算だったが

さらに誤算があった。

アンジェリークが宮殿の廊下を歩いているとリュミエールの後ろをコソコソつける夫の姿を見つけた。

手には剣、目つきも鋭い。慌てて駆け寄ろうとしたが時すでに遅く夫はリュミエールに背後から切りかかっていた。

凄まじい音がして流血の惨事を思って閉じた目を恐る恐る開くと、廊下に倒れてるのは夫の方だった。

リュミエールがうろたえている。

「あぁ・・・すみません、オスカー。体が勝手に・・・。」

手にした竪琴が剣を弾いた衝撃で壊れている。

オスカーは殴られたらしい腹を押さえてうめきながら、なぜか幸せそうにつぶやいていた。

「さ・・・さすが我が子・・・だ。」

アンジェリークは目眩を感じて廊下にへたりこんだ。

あぁ、オスカーってば・・・なんて手のかかる「MY BABY」。でも、そこが可愛いの♪。

 

しばらくの間、このオスカーの奇行とリュミエールの変貌は聖地のあちこちで見られ

人々を驚愕させたということだ。

(^_^;)

**** 水鳴琴の庭 金の弦 ****