毎日がカルチャーショック
ロゼ様 原作 真珠 文
はっきり言って、なんにでもナレってものがあるもんだわっ!
宮殿の廊下をズンズン歩きながら私は思った。
ジュリアス様のおこった顔もいつものことだからコワクない、
かえって気持ちがひきしまっていいくらいだし
ランディ様の空中回転も感心したけど行くたびみせられちゃね
クラヴィス様のくらいのも夜だと思えばきにならないし
オスカー様の女ならなんでもくどくのも出身星の方言=なまりだと思えば大丈夫
ルヴァ様の話がながいのも要点だけ聞いてればいいんだしラクでいい
ゼフェル様のぶっきらぼーなのも最初はこわかったけど今ではカワイイものだ
オリヴィエ様のキラキラにめがくらむこともなくなったし
マルセル様の動物さん達もすかっりなかよしさんだ
なのにっ!なんなのよぉ〜っ!!
キッとみすえる扉の主は私を毎日パニックにおとしいれる。
毎日毎日、17年間つみあげたものが根底からひっくりかえされる。
これってカルチャーショックって言うんだろうな…
どうしてだろう?なんだか、ものすごおおくクヤシイ。
でも育成をお願いしなくちゃならない…
扉をノックしようと近づくと…あっ…もう、ドキドキ。
こんなこと今まで考えられなかった。私がダレかと話すのにアガルなんて…信じられない。
人と話すのが大好きで得意で、いつだってみんなの輪の中にいてリーダーだった私が…
おくびょうになってる?
そっと扉に体をよせるとあたたかな水のサクリアの力にまかれて
どこまでもながれていってしまいそう。
涙がとまらない…いやだ、いちど寮にもどって顔をあらってこなきゃ
もう!どうして毎日なにかしらこうなんだろう?
そのとき扉がひらいた。心臓がヒックリかえる。あわてて顔をふくと…。
サラリ、まず水のようにながれる髪がみえた。
そしてやわらかなほほえみをたたえた美しい横顔…心も姿も寸分のみにくさもユガミも無様さもない
世の中の美しいもの優雅なもの神聖なもの高貴なもの正しいものだけあつめた
その上、きびしくてやさしくて柔らかくて強い人。
私に気が付いてみせるおどろいた顔も、まるで水鏡のうえにはしる波紋のように美しい。
「アンジェリーク…ないていたのですか?」
頭の中がパニックで真っ白になった。
「とーんでもありませんっ!私、泣くなんてガラじゃないですよぉ」
アッハッハッハッて笑ったのに心配そうな顔。
ぽろっと目から本当の私がこぼれた。
もう、とまらない。
本格的に泣き出してしまって気が付いた。
くやしかったのは今までかくしつづけていた自分が自分にみつかってしまうから。
本当は一人がこわくてしかたのない弱虫なのに強いふりをしていた。
強いふりをしてつっぱってないと一人で立っている事もできない。
笑って話してみんなにかこまれることで自分をかくしていた。
それなのに、おくびょうで大好きな人の前では足も声もふるえる
ただの少しも強くない私をおもいしらされるから。
ワンワン泣いていたらリュミエール様は私の髪にソッとくちづけして微笑まれた。
「あなたには、かないませんね。私は、あなたに毎日おどろかされる。」
ビックリして思わずなきやんでしまった私の髪を優しい手がすいている…。
もうツヨガラナイデ
いい です か?フッと力がぬけてラクになった。
みあげると困ったように首をかしげたやさしい笑み。
もしかして…毎日カルチャーショックだったのは……?
ツヅキ
ハ アナタ ノ 「コ・コ・ロ」 ノ ナカデ…
終わり
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水鳴琴の庭 金の弦 ****