バースディケーキは愛の大きさ 真珠

 

リュミエール様のお誕生日に何を贈ろう。

さんざん考えた末にバースディケーキを作る事にした私は

ここのところ本とにらめっこ。

だって特別なケーキにしたいもの。

 

でも考えれば考えるほど、あれもこれも良く見えて迷う迷う。

「時間がないわ・・・ここは、開いたページのケーキにしよう!」

目を閉じて本を手に取ろうとしたら、スッテン転んで一冊の本が私の手の中にひろがった。

ケーキの本じゃないけど、そこにはケーキの絵が載っていた。

「あなたにもできるパーティマジック」

これって、いいかも!!

 

とにかく、ケーキを作らなきゃ。

私はリュミエール様のお誕生日まで、ひたすらケーキを作った。

そして、それは出来た。

高さ5メートル直径5メートル総重量?。

白いクリームに薄ピンクのバラを散りばめた、ちょっと見ウエディングケーキ。

ウエディング・・・想像するとウットリしちゃって、しばらく妄想にふけっちゃった。

でも、これからが本番!

 

運送屋さんに頼んでケーキを届けてもらうと

私はとびきりセクシーな水着に着替えて、リュミエール様の私邸にしのびこんだ。

ケーキの箱には、実は扉が付いてるの。

箱の中に入りこむと、さらにケーキの中にしこんだ空洞に潜りこむ。

私はリュミエール様の誕生パーティで盛り上がったところで

このセクシーな水着姿でケーキから出るの。

われながら完璧な計画に胸がワクワク。

早く始まらないかなー♪

 

連日のケーキ作りに疲れていたのか眠ってしまったみたい。

まわりが騒がしいのに目が覚めた。

あっ、オリヴィエ様の声。

「すっごいケーキねー。リュミちゃんもスミにおけないわねー。」

オ・・・オリヴィエ様ったら・・・いやん。

「ですが、パーティにはいらしていただけなかったようです。」

あ〜、リュミエール様の声が沈んでらっしゃるぅ。

嬉しいような申し訳ないような思いに、今こそとケーキを飛び出す決心をした、が!。

「よぉーし、俺が切り分けてやろう。」オスカー様?!

まわりで喜ぶマルセル様やメルさんの声にかぶさって鞘から抜かれる剣の金属音みたいなものが・・・。

次の瞬間、私のいる空洞部分を銀色の光が走った。

きゃぁあああああ、声にならない悲鳴をあげて私は空洞部分からケーキの中に退避した。

ケーキの中をモグラのように逃げ回る私の前後や左右をオスカー様の剣が切り裂く。

ああ、もうダメぇ。そう思った時ケーキを切り終わって剣が鞘に戻る音が響いた。

「すごいですねぇ。クリームひとつ付かないんですね。」あ・・・ティムカ様。

「当然だ。俺がふるった。俺の剣だからな。フッ・・・。」きゃあああと言う黄色い声が湧き起こる。

 

しかし、ホッとしたのもつかの間、私はケーキの中にハマリ込んで身動きが取れなくなっていた。

「ボク、これがいいなぁ。大きいし。」マルセル様ぁ、お願いだから私の入ってるのは選ばないでぇ。

皆様それぞれ思い思いのケーキを選ばれたみたい。

それにしても多すぎるとオリヴィエ様のグチが聞こえる。

私ってばラッキーコインみたい・・・誰のところに置かれているのかしら?悲しくなった時。

外から誰も気が付かないような微かな、悲しそうなため息が聞こえた。

リュ・・・リュミエール様っ!?

この声は間違いない。

私はリュミエール様の前に置かれてるんだぁ〜パニックを起こしかけた頭に

また、あのため息。

なぜ?お誕生日なのに楽しくないのですか?

私に何か・・・?。

私は無我夢中で体をひねってケーキから飛び出した。

だって、こうやって道化てみるくらいしか。私には出来ないじゃない!。

ケーキの乗っているテーブルから見下ろすと、皆様あぜんとしてらっしゃる?

そんなに驚いた?。

・・・・・・・・・?

ヴィクトール様のお口から下がってるもの、見覚えがある・・・

エルンスト様がケーキから引っ張り出して赤面してるものも。

あの花柄は・・・。

私は自分の体を見下ろして、小さくウソとつぶやいた。

 

私は何にも着ていなかった。

セクシーな水着はセクシーすぎてケーキの中を泳いでるうち

脱げてしまったらしい・・・。

 

クリームがきわどく体を飾っているのみだった。

とりあえず、こういう状況で一番見たくないリュミエール様から目をそらすと

こういう状況で唯一できること・・・悲鳴を上げて座り込んだ。

ジュリアス様の声が響く。

「リュ・・・リュミエール以外は退出するように。今すぐだ。」

なぜか私の回りを避けて絶対零度の空気が吹き付ける気配がして、

ひどく怖じ気づいたような雰囲気が辺りを満たし皆様がバタバタと部屋を出て行く。

えぇー。この状況で、どなたも助けて下さらないのぉ〜?。

最後にオリヴィエ様が扉で立ち止まったみたい。

「もう、そんなに必死になっちゃってぇ。アンタのそんなにコワイ顔はじめてみたよ。」

コワイ顔?必死?しょーがないじゃない、この状況なんだもん。

って、誰の話?。頭かかえた私の顔が見えるの???。

笑い声と共に扉の閉まる音。やだー!うそー!このカッコでリュミエール様と2人きり?!

顔を上げられなくて固まっているとリュミエール様の透き通るような輝きを帯びた

美しい指がテーブルの上のケーキまみれの私の目の前に差し出された。

 

少し上気した頬に困ったような笑みを浮かべて、

そっと私を立たせると抱き下ろそうしてくださった。

しかし私の足はタンボのドロにはまったようにケーキにはまってとれない

何とか抜けた瞬間、私とリュミエール様は床に転がりクリームまみれになっていた。

「あ・・・あの・・・あの・・・」リュミエール様の腕の中であせるばかりで言葉が出ない。

そんな私の頬に舌が軽くふれた。

リュミエール様が優しく微笑む。

「MY SWEET」

 

続きは大人になってから・・・。

 

**** 水鳴琴の庭 金の弦 ****