白木蓮
水色真珠
早朝の薄闇の中、まだ葉も纏わない早春の枝に
白い灯火にも似た花が、ひっそりと蕾をほころばせている。
らしくもなく見とれてしまった私の茶色い髪を冷たい風が吹き流して我にかえった。
「こんなところにいたら、風邪ひいてレイチェルに怒られちゃうわね」
一人呟くと自らの王宮への道を辿り歩き始めた。
だが先ほど、見た夢が自分の心を締め付ける。
けれども女王としてやらなければならないことは多い…。
吹っ切る為に冷えた早朝の散歩に出たのに
かえって思いが重たくなってしまった。
あの白い花は彼の人を、あまりに思い起こさせたから。
「しっかりしなくちゃ」自身を励ます声がうつろに響く。
女王になった瞬間に自らを訪れた力ゆえに、
かえって光輝く偉大な力を持つ金色のふわふわした巻き毛の女王の巨大な存在に圧倒された。
負けるもんか、いつもなら湧き上がる思いが怖気づいて縮こまった。
その夢が夜毎に心を悩ませる。
こんなことは初めて…どんな相手にも状況にも臆することなどなかった
真正面から立ち向かってきたのに。
今、自分の力が信じきれずに心が揺らいでいる。
また…白い花を、彼の人を思い出す。
助けを求めているのだと気づいて、さらに自分自身が情けなくなる。
なぜ会いにきて下さらないのかしら?
私のことを忘れてしまったのかしら?
あちらの女王の力に圧倒されたのも、きっと貴方が側にいないからなのに。
堅い誓いの言葉さえ流れ落ちる水を掴むよう。
小さな小川の流れに、さっきの白い花の花びらがクルクルと回る小舟のように流れて来ていた。
まるで私自身の乱れる心に翻弄されているよう…。
思わず手を伸ばして水に触れた瞬間に、とても強く大きな思いに包まれた。
言葉にならないほど大きく強い揺るぎ無い愛情、黄金色の髪の女王のサクリアよりなお偉大な力。
冷たく冷えた白い花びらから、限りなく暖かく深く強い思いが体に染み込む。
「リュミエール様…」思わず力の源たる名前が唇をついてでた。
「お呼びになりましたか、アンジェリーク?」
神の如き美しい声と共に背後から、ほっそりとしたしなやかな腕で抱きしめられ
水色の水晶のように透き通る髪に包まれて心臓が跳ね上がる。
会いたい気持ちは遠く宇宙に隔てられてさえ
…ひとつだった。
END
マジに悩んでるのかと思えば、ただのベタベタですいません〜(^_^;)
あおぎりひろや様に捧げます〜リンクありがとうございます〜♪
**** 水鳴琴の庭 金の弦 ****