ちょっかいださずにいられない by真珠

今日も今日とてランディの奴は剣の稽古をつけてくれとやってきた。

俺は自分で言うのもなんだが面倒見はいい方だ。

快く引き受けて場所を探していると噴水の方から妙なる調べってのが聞こえてきた。

この時点で俺の面倒見の良さはクズカゴに捨てられた。

あの竪琴の奏でる物悲しい音。俺にはわかる…奴は一人に違いない。

「悪いな、ランディ。ヤボ用だ。剣の稽古は一人でやってくれ」

熱血直情のランディは、すぐ表情にでる。断った事を怒っているわけじゃない。

自分の事で、こいつが怒る事は無い。

怒るのは他人の為だ。

「オスカー様っ!またリュミエール様にからみにいくんですね。

弱いものイジメはよくない事だと思います。なんでリュミエール様にそうからむんですか?」

「人聞きの悪いことをいうな…。俺は弱いものいじめなんかしない。

美しいレディの甘いくちびる白い胸に誓ってもな。」

ランディは真っ赤になって口をパクパクさせている。

まったく何時までたっても子供だな、これくらいの言葉で何をうろたえているんだか。

かたまったランディをおいて噴水の方へ行くと、いた!。

やっぱり一人だ。俺が現れたのを見るとうつむいてしまう。

それはそうだろう。このところしつこく言っている俺の誘いは奴にとってはサイテーの話だ。

「よう、水の守護聖殿。」

「物思いにふけっておられるご様子だが…また人が争うのにご傷心かな?」

この間はここでオリヴィエに割ってはいられて失敗したが

今回、極楽鳥は来なかった。良い調子だ。

「うんと言っては貰えそうもない顔だな?そんなにイヤか?」

考え込んでいる…もう一押し…。

「俺のため…なんだぜ。」ここで強くでてはいけない、ちょっと弱気なふりをしてみる。

とことん人が良い奴だから、この方が効くはずだ。

「オスカー?なぜですか?」

よっしゃあっ!かかったぁ!内心そう叫びながら顔では寂しげに微笑んでみせる。

「ここじゃあ、なんだ森の湖に行こうぜ」

立ち上がって歩き出す、もちろんここで振り返って付いてきてるか確認してはいけない。

そんな事をしたら表情を読まれてしまうかもしれない。

それに律義な奴だから、付いてこないわけがないのだから。

 

やがて俺達は森の湖についた。

ここまでくれば人目のある庭園と違って泣こうがわめこうがこっちのものだ。

俺は服とブーツを脱いで体操をはじめた。

「お前は準備体操しなくていいのか?」

男に優しくする必要性は感じないが、

一応、あまりハンデがあって勝っても嬉しくないので声をかけておく。

「まって下さい。私は、まだやるとは言っておりませんが…。

第一、何があなたの為なのかも聞いておりませんし…」

往生際の悪い奴だ。

「そうだな、たとえば俺が調査で外界へ行って海に落ちたとしよう」

乱暴な話だが素直な性格が災いしておとなしくウンウン聞いている。

「うまく泳げなくって死んでしまったら宇宙の危機だ。」

「だからといって、なぜ私と競泳しなければならないのですか?」

うっ、するどいな…。

「せめて、お前に勝てるくらい泳げれば安心だろう?どうだ、違うか?

宇宙の危機だって言うのにやらないって言うのか?どうなんだ?」

強引にたたみかけて考えるヒマを与えずうなずかせてしまう。

やったぜ。

今日の俺は、もう泳ぎの練習中に足がつってリュミエールに助けられた、あの無様な俺じゃない。

何度も外界へぬけだし聖地時間で数週間のうちに何年分もの

特訓をして生まれ変わったスーパースイマーなんだ。

全宇宙大会でも優勝した。

ふっ、悪いがあの時の屈辱はかえさせてもらうぜ。

特注の流体力学を計算しつくされた最高の水着を着た俺の姿が湖面にうつっている。

カッコイイ、ほれぼれするぜ。

この姿をみせられないなんて聖地のレディ達に申し訳ない、胸がいたむぜ。

すまない俺のレディ達。

ふと、奴をみるとあさっての方をむいて何か考え込んでいる

竪琴こそ傍らに置いてあるが体操もしていないし、サンダルさえ脱いでいない

普通に歩くだけでジャマそうなローブのままだ。

なめられたものだ。思わずはらわたが煮えくり返る

「そのままで、いいんだな。じゃあ行くぞっ!」

声と共に飛び込み猛然と手足を動かす。

ふと岸を見るとリュミエールは、まだボサーッとつったったままだった。

俺の速さに唖然としちまったのかもしれない、まぁ自業自得だな。

と思った瞬間、俺の横をイルカみたいなもんがすり抜けていった。

ここにそんな大きな魚がいたか?

あせって立ち上がってしまった俺の目に向こう岸にあがるリュミエールの背中が小さくうつった。

そして魚の正体に気が付いて俺は愕然とした。

リュミエール…。ば…化けモンか?あいつ…。

湖は少なくとも直径200メートルはあるぞ。あの速さで息継ぎしないで…どうして…?

パニクった俺が岸につくまでにリュミエールはサクリアの力だろうか?。

すっかり乾いて、いつものように端然としている。

しかし顔をあげると悲しみと強い決意の色がみえた?。

「貴方の杞憂は良くわかりました…確かに強さを司る貴方でも御不安になられるはずですね。

あの泳ぎでは…。

でも、大丈夫です!…きっと私が貴方を立派に泳げるようにしてさしあげますから…」

ニッコリ微笑まれて、しまった!と思ったが後の祭りだった。

俺はリュミエールにあがったばかりの湖に放り込まれて日暮れまで特訓された。

相手の為と思い込んだリュミエールは無敵の強さを発揮するんだ。

そんな月日が、どれほどあったことか。

おかげでリュミエールには勝てないが俺は、どんな大波でもスイスイ泳げるくらい上手くなった…が。

 

今日も今日とてランディの奴は剣の稽古をつけてくれとやってきた。

俺は自分で言うのもなんだが面倒見はいい方だ。

快く引き受けて場所を探していると噴水の方から妙なる調べってのが聞こえてきた。

この時点で俺の面倒見の良さはクズカゴに捨てられた。

あの竪琴の奏でる物悲しい音。俺にはわかる…奴は一人に違いない。

「悪いな、ランディ。ヤボ用だ。剣の稽古は一人でやってくれ」

熱血直情のランディは、すぐ表情にでる。断った事を怒っているわけじゃない。

自分の事で、こいつが怒る事は無い。

怒るのは他人の為だ。

「オスカー様っ!またまたリュミエール様にからみにいくんですね。

弱いものイジメはよくない事だと思います。なんでリュミエール様にそうからむんですか?」

「人聞きの悪いことをいうな…。俺は弱いものいじめなんかしない。

ずぅえったいになっ!!!。」

俺の思わぬ強い口調にランディは口をパクパクさせている。

かたまったランディをおいて噴水の方へ行くと、いた!。

やっぱり一人だ。俺が現れたのを見るとうつむいてしまう。

それはそうだろう。このところしつこく言っている俺の誘いは奴にとってはサイテーの話だ。

「よう、水の守護聖殿。」

「物思いにふけっておられるご様子だが…また人が争うのは…なんてお考えかな?」

だが湖に俺を放り込んだ時の力!あの屈辱は忘れないっ!

絶対、今度こそグウの音もでないようにしてやる。

何度も外界へぬけだし聖地時間で数週間のうちに何年分も

俺は腕相撲チャンピョンについて地獄の特訓をおこない無敵の男になったんだ。

全宇宙大会でも優勝した。

「うんと言っては貰えそうもない顔だな?そんなにイヤか?…

 

ENDRESS

**** 水鳴琴の庭 銀の弦 ****