なんでもお宝鑑定団
〜聖地大会〜 原案 奏多春花 作 真珠今日もルヴァのへやはリュミエールとのお茶会だった。
そこへ訪ねてきたのはヒラヒラと衣装をひるがえす極楽鳥のオリヴィエだった。
実をいうと先日ジュリアスが使っているペンが
当時は無名だったが今は値段も付けられないくらい高い値のつく名工の手による
宇宙宝級のものだとルヴァが見抜いて、
調べたところ惑星3個分に匹敵する値段がついたもので
このところ色々な物を守護聖達がかわるがわる持ち込んでいるのだ。
「ルヴァ!こんどこそ、お宝よっ!私の館のトイレの絵ってばロンブラントの踊るひょっとこですって!
これでジュリアスのはながあかせるわっ!惑星4個分の値がつくはずですもの。」
高笑いするオリヴィエをよそにルヴァとリュミエールはどれどれと覗き込む。
「う〜ん、絵はわかりませんねぇ。リュミエールどう思います?」
「あの…たいへん申し上げにくいのですが…ロンブラントの絵とは筆使いが明らかに違いますが?」
その言葉にウキウキと踊りをおどっていたオリヴィエがたおれる。
ルヴァがルーペで覗き込む。
「ほ〜、なるほど。さすがにリュミエールは絵に詳しいですねー。」
言って2人が振り向いた時にはオリヴィエは、もうそこにいなかった。
「あ〜。みんな、どうしたんですかねぇ?品物を持ち込んでは消えてしまいますけど?」
2人は首をかしげる。
「えぇ、ルヴァ様。お茶を勧める間もありませんね。」
そこへふらりと現れたのはクラヴィスだった。
「おや〜、クラヴィス珍しいですね。あなたもなにか持ってきたんですか?」
「いや。」
「でしたら、お茶をどうぞ。いま用意いたしますから。」
お茶会はようやく3人になった。
やがて穏やかな一時が流れ執務に戻る時間になろうとする時
年少組3人がやってきた。
「ルヴァ様ぁ!鑑定お願いします!」ランディが元気よくいう。
「おや〜。今度はなんですか?」
3人がもったいぶって取り出した物は小さなイヤリングだった。
「公園の陛下の像の側にあったのをチュピが見つけたんです。」
よほどチュピの手柄が嬉しいのかマルセルは胸を反らせている。
「ランディの奴がAって彫ってあるから陛下のかもしれねぇってうるせーんだ。んなわけねーのによ。」
ゼフェルの言葉にランディがむきになる。
「ゼフェルが最初に陛下のだったらすげーよなっていったんじゃないか!」
「はあ、でも歴史的価値とかはわかりますけど。誰かの由来の品というのはわかりませんね。
その人が購入したと証拠が残るような高価なものならともかく…」
「ふっ…ふふふっ」
いきなりクラヴィスが笑い出して一同ギョッとする。
唯一かたまらなかったリュミエールが首をかしげてたずねる。
「クラヴィス様、何か?」
「それの由来が水晶球に見えただけだ。」
年少組はクラヴィスにつめよる。
「ど…どうなんですか?陛下の?」
「違うな。これはオスカーがアニーという名の女に渡そうとして持ち歩いているうちに落とした物だ。」
3人はがっかりした。
「くそっ、まぎらわしいことしやがって!」
3人はドカドカとでていった。
そんなこんなで自分達は無自覚なままルヴァ達は、いつの間にやら聖地のお宝鑑定団と化していた。
そんな鑑定団に、ある日とんでもないことが持ち込まれた。
みけんにしわをよせたジュリアスに持ち込まれた依頼は…
「あ〜、聖地で一番高い物ですか?」
クラヴィスがフッと笑う。
「お前の鼻ではないのか?」
ジュリアスの自慢のペンが、
ついにオリヴィエの鏡に負けてプライドがいたく傷ついているのを知った上での挑発か?
ともかくジュリアスは激昂し依頼を引き受ける約束でルヴァは、その場をおさめた。
他称「お宝鑑定団」は集まって会合ではなく、いつものようにお茶会を開いていた。
「あ〜、なんでしょうねぇ。聖地で一番価値のあるものって?」
ルヴァは、ずーっとお茶を飲むとため息をついた。
「ルヴァ様、それは心ではないでしょうか?
形がある無しに関わらず込められた心と、その心を嬉しく思う心が、
それを愛しいと思わせるのだと私は思うのですが?。」
「ルヴァ、それは愚問だ。価値のあるなしは人によって違うものだ。」
ルヴァはウンウンとうなずいた。
「そ〜なんですよね。問題はどうやったらわかってもらえるか…ですねー。」
ゆっくりとルヴァは立ち上がった。
「うーん。この手でいきますかねえ…。」
そして2人に長い説明をはじめた。
次の日の曜日、公園に大きなテントがたった。そしてその入り口にはデカデカと看板がかかげられた。
「なんでもお宝鑑定団〜聖地大会〜」
テントの中には、お宝鑑定団の面々と自慢の逸品をかかえた守護聖達と聖地中の手の空いた職員がいた。
ルヴァが前にでると挨拶をはじめた。
「あ〜、みなさん。よくおいで下さいましたね。では、はじめましょうか。」
最初に進み出たのはジュリアスだった。
持ってきたのは年期の入った、しかし繊細で美しい細工のチェスの盤とコマだった。
「これは、私が実家から持ってきたものだ。作者はわからないが何代前かの女王を輩出したおり
記念に作られ女王の使われたものだと聞いている。惑星10個分以上の価値はあるだろう。」
3人は額をつきあわせ話し合いながら念入りに調べる。
しばらくしてルヴァがニコニコとして皆の前にたった。
「あ〜、結果がでました。まず私ですが、歴史・資料的価値は0です。」
ジュリアスがガタッと立ち上がる。他の守護聖から冷やかしの声や気の毒そうな声がかかる。
「なぜなら由来だが、女王の使っていた物ではないだからだ。」クラヴィスが冷たく続ける。
「女王の使っていた物は今でも女王の執務室にある。それはお前の家用に作られたものだ。」
「クラヴィス!真だろうなっ!」ジュリアスは青筋をたててクラヴィスを睨み付ける。
「ジュリアス様。ですが、たいそう美しいものです。
これだけ形と用途が決められていながら、この表現力・技術の高さは並大抵ではないと思います。
保存も良く美術的価値ははかりしれないのではないでしょうか?。」
それを聞くとジュリアスは複雑な表情でイスに腰掛けた。
最終的にジュリアスのチェスには惑星5個分に匹敵する値段がついた。
次に出てきたのはランディだった。ランディは手に黒い岩のようなものを持っていた。
「俺がロッククライミングした時見つけた石なんだけど化石ってものらしいです。」
リュミエールとクラヴィスは和やかに何かささやきあい
リュミエールがニッコリ笑っただけで見たのはルヴァだけだった。
しかしルヴァはひどく興奮していた。
「あ…あ〜っ!こ…これはぁ、はあ、うんうん。なるほど〜。
驚きました。一大発見です。聖地にアラモーナイトの化石ですっ!」
興奮しているのはルヴァだけで会場はわけが分からずシーンと静まりかえっている。
「え〜、つまり
(以下長い為中略)で、ここが海だったと言うことなのです。」そこまで聞いてようやく会場がざわめきにつつまれた。
チンプンカンプンでランディには納得できない様子だったが
この資料的価値により化石には、やはり惑星5個分に匹敵する値段がついた。
「笑っちゃうわね!あんた達のは5個分?私のは、もっとスゴイわよ。」
オリヴィエが強引にステージにあがってきた。
手にはキンキラキンの見るも恥ずかしい衣装をもっていた。
「これは300年位前の大歌手の美山ケンイチのステージ衣装よ。
ルヴァ、資料的価値あるでしょう!リュミちゃんも、美術的価値もあるでしょう!」
「あ〜、でも現存しているファンはオリヴィエくらいですし、
ステージ衣装というと資料館もないですしねぇ。」とルヴァはつれない答えをかえす。
リュミエールはリュミエールでチラッと衣装を見ると恥ずかしそうに頬を染めてうつむいてしまった。
「しかし、確かに美山のものだ。美山の出身惑星の紅白町に行けば証明するものもみつかる。
まあ珍品であることは確かだ。」クラヴィスの一言で、
ほぼオーパーツのようなあつかいでムッとしたオリヴィエの衣装にも惑星5個分に匹敵する値段がついた。
「ふっ…しょせん、極楽鳥の持ってくる物なんて、そんなものだ。」
オスカーがヒラリとステージにあがると場内が黄色い歓声でうまる。
オスカーが腕に抱えているのは古びた盾だった。
ハラリと覆い布が取り除かれると色鮮やかなフェニックスの紋章があった。
「俺の親父が昔ギャンブルで勝って手に入れた物だ。
相手の話じゃ凄いいわれと歴史的価値があるそうだ。」
「名もない兵士のものだな。」クラヴィスが断言するとオリヴィエがブッと吹き出す。
「あ〜、特に有名な歴史的事件にからんだことは、ないですねぇ。」
ルヴァは言うと盾をリュミエールに渡した。
「ですが、この絵の手法は…」手の中で方向をかえて眺めていたリュミエールの目が何かをとらえた。
「あっ!やはりそうです。有名な画家ルーディが幼なじみの就任を祝って描いた絵です。」
リュミエールの言葉に悔しそうだったオスカーが目がウルウルさせて半復活する。
しかしついた値段は、同じく惑星5個分に匹敵する値段だった。
次にゼフェルが持って出てきた物は虫かごだった。
「こいつは超熱帯惑星にしかいない奴だぜ。
しかも狂暴で数が少ねえから生きたままなんて捕まらないんだぜ。
それを生きたまま…しかもツガイだっ!」
虫かごの中から大人のスリッパくらいある黒光りする虫が2匹はいでてきた。
「ふっ…ゴキか。」クラヴィスは一言でかたずけた。
リュミエールは一瞬硬直したあと気絶した、とっさにクラヴィスが支えなかったら大騒ぎになったことだろう。
ルヴァだけが嬉しそうに虫をルーペでながめた。
「本当に素晴らしいですね。昆虫の資料を集めているところなら欲しい逸品でしょうね。」
ルヴァの自分が欲しそうな様子に会場からブーイングがまきおこった。
ブーイングに腹を立てたゼフェルはイスを蹴倒して会場を出ていってしまった。
あわててルヴァがゼフェルを連れ戻して、つけた値段は惑星5個分に匹敵する値段だった。
最後はマルセルだった。元気よくステージにあがると手の中の物をだした。
それは小さな変色した古いコインだった。
「カティス様からもらったんだけど千年に一度しかあらわれない奇跡の泉で清められたコインなんだって!
すごいでしょう?。」
そういわれてルヴァは困った顔で笑った。
「え〜、今も流通しているコインですし、この年代のものはたくさん出回っていますからねぇ。」
マルセルのホッペタがプクッとふくらむ。
リュミエールもかなしげに首をふる。
「かなり変色していますし、痛みもはげしいですから…。」
マルセルのホッペタがさらにプクッとふくらむ。
「だが奇跡の泉につかったことは確かだ。泉の近くの町に行けば泉につかったコイン全てが照合できるようになっている。
本物であることは証明できるだろう。」
クラヴィスの言葉に少し機嫌をなおしたマルセルのコインも惑星5個分に匹敵する値段がついた。
ルヴァはよっこらしょと立ち上がるといった。
「みんな、いい値段がつきましたねぇ。」
「ふっ…満足か?これで。」
「これで本当によいのですか?」
ひときわ高い声も響く。
「私は、もっと価値のある物を知っていているわ。」
みんなギョッとした。そういってギャラリーの中から現れたのは現女王であったからだ。
「皆様なぜ物の値打ちなんて気になさるのですか?
この大会に参加して、そんなもの人によって違う物だと気づかれたはずです。」
アンジェリークはシュンとした守護聖達にいたずらっぽくニッコリ微笑みかけた。
「わたしは聖地で一番価値のあるのは皆様だと思います。
惑星を何個も作り出す力をおもちなのに、惑星5〜6個に匹敵する値段が何だっていうのでしょう?」
今度は女王は会場の女の子達に向かってたずねた。
「どれもこれも惑星5個分に匹敵する値段ですって…誰か持ち主の守護聖様より欲しいって思う?」
会場は笑いと大きな否定の声でうずまった。
守護聖達の顔に照れくさそうな笑みが浮かぶのを見ると女王は
鑑定団の側に立ってささやいた。
「乱入しちゃってごめんなさい、黙ってられなかったんです。」
「あ〜、いえいえ。とんでもないですよー。私達が言うより説得力ありますよー。」
ルヴァがニコニコとおうじる。
クラヴィスとリュミエールもうなずく。
こうして御役御免になったお宝鑑定団は、ようやく静かなお茶会を楽しめるようになったのだった。
おわり
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水鳴琴の庭 銀の弦 ****