みんなのゴルフ
by真珠 協力 春花様&ロゼマリーン様やあ!みんな元気かいっ?俺ランディだよ。今日はとても大事な日なんだ。
実は守護聖のチャリティゴルフ大会があるんだ。
ここでの収益金は遠くの惑星の開発費用になるんだよ。
あっ、遠くの惑星って辺境の星のことなんだけど言っちゃいけないんだ。
田舎とか未開もダメなんだよね。どうしてかな?。
ははっ。まあ、いいか!
とにかく広いところで思いっきり体を動かせるんだから!
と思ったけどクジで外れた俺は運営委員会なんだ。みんなにルールを守らせるのが役目なんだよ。
最初はツマラナイって思ったけど。
リュミエール様に正義感が強くて公明正大な俺に任せれば安心って言われちゃってさ。
今、とっても燃えてるんだ。
俺が一緒にまわってるのはリュミエール様とオリヴィエ様とルヴァ様・マルセルの組。
先にまわってる組は、ジュリアス様とオスカー様とクラヴィス様とゼフェル。
くじ引きで決まったんだけど、なんか向こうの組のメンバーは皆シブイ顔してたよ。
なんでかな?
と思ってたらスタートの時間だ。
オリヴィエ様がキレイなフォームでクラブを振り下ろすと
ボールは真っ青な空に気持ちよく吸い込まれていった。
「ナ〜イス」声がかかる。見るとフェアウェイのなかほどにボールが転がっていた。
リュミエール様もルヴァ様もマルセルも自分のことのように喜ぶ。
次はルヴァ様の番だ。
本を読みながら頷いたり首をかしげたりしていたがパタリと本を閉じると
ティインググランドに立ってスウィングした。
空を見上げるがボールは見当たらない…?。
下に視線を落とすとボールはティ下から1ミリも離れずにルヴァ様の足元にあった。
オリヴィエ様がケラケラと笑った。
「さっそく、やってくれちゃってぇ♪。何を寄付してくれるのかなぁ?。」
リュミエール様が心配そうにマルセルはワクワクと見つめる。
ルヴァ様はニッコリ微笑むと本を広げた。
「本来は無罰なんですけどね?」
「へーっ、そうなんですか。」マルセルが感心しながら本を覗き込む。
「なーに言ってんの?正規ルールじゃないわよ。ポカッやったら出すのよ。」
「そうなのですか?」今一つリュミエール様もルールがわからないようだ。
今回はチャリティ目的なのでルールは少し違うんだ。
ルヴァ様はニコニコしながらも困った顔で本を一冊だした。
「この本の内容は覚えていますから誰か他の人が読んで役立ててくれると嬉しいですねぇ。」
あつさ10センチは軽く超える本なのに覚えてるってスゴイな。
俺だったらマクラにしかならないよ。
こうして出してもらったものを守護聖様グッズとして売ると
高い値段で売れて寄付金になるんだって。
ちなみに「怒ったらダメ」とか「笑顔でプレイ」とかも破ると一罰なんだよ。
ジュリアス様の組のメンバーは、それ聞いてガックリうなだれていたけど
こんなに楽しいことしてるのに、こんな罰則やぶる方が難しいんじゃないかなぁ?。
「面白いから、言っちゃダメな言葉とかもつくらない?」オリヴィエ様が提案すると
なんでも面白そうに聞こえる、思わず頷くと。
「じゃあ、ゴルフに関係ある言葉禁止ね。クラブとかグリーンとかナイスオンとか。」
ええっ!と声があがるけど、みんな楽しそうだ。
ルヴァ様が再度クラブをふると今度はボールはポテポテと1メートルくらい転がった。
リュミエール様が心底感心したようすで嬉しそうに手を叩く。
次はマルセルだ。
クラブを振るが…何度振っても当たらない…。
しまいにホッペタをふくらませて座り込んでしまった。
「あ〜ららっ。マルちゃん、怒るとペナルティ増えちゃうわよ。」
それを聞くとルヴァ様がニッコリ微笑んでオリヴィエ様の肩をつっついた。
「あ〜、オリヴィエ。あなたもです。今、ゴルフ関係の言葉を…。」
オリヴィエ様もニーッと笑う。
「ルヴァもね。」
「えっ?ルヴァ様は何かゴルフ関係の言葉を言われましたでしょうか?」
リュミエール様が言うと2人はニッコリ笑って声を揃えた。
「リュミエールも。」
マルセルもなんとかボールにあてると、なんとルヴァ様より5センチほど先まで転がって大喜び。
オリヴィエ様は疲れたようにため息をついたけど俺もとっても嬉しかった。
リュミエール様も良かったですねとマルセルを誉めてくれた。
でも決まりなのでみんなから色々な物をもらった。
次はリュミエール様だ。
いつもと違って白いスラックス着て髪を後ろで束ねている姿は「それだけで売れる」とか言って
実はさっきから女王陛下と補佐官が植え込みの影から隠し撮りしてるんだ。
優美なフォームでアドレスするとボールはやわらかな弧を描いて…
多分…50センチくらいは…飛んだ。
オリヴィエ様は後ろを向いて芝をプチプチ揃えはじめ、
リュミエール様達は、お互いに健闘を称えあった。
俺も見ていたらやりたくなってきた。
「俺も一回だけ、やってもいいですか?」
「いーんじゃない?どうせ、お祭りなんだし楽しんだ者の勝ちよ。」
オリヴィエ様が言うと、みんなうなずいてくれた。
マルセルがピョンピョン飛び跳ねながら応援してくれる。
ルヴァ様とリュミエール様もニコニコと微笑みながら俺がアドレスするのを待っている。
嬉しくなって思いっきりクラブを振り下ろすと、ボールは低い弾道で一直線に…
隣のホールへ飛んでいった…。
ホールインワンだ。
途中で、この日の為に色々な機能を搭載したゼフェルの怪しげなクラブをへしおって、
オスカー様のキャディさんに差し出したバラを消し飛ばし
クラヴィス様の髪を肩甲骨までくらいの長さで綺麗に揃えて断ちきり
何か怒っている様子だったジュリアス様の振り上げた手の指輪を貴金属の塊に変えて。
ちなみにクラヴィス様の髪は地面に落ちる前に陛下が拾って
チャリティオークションに出す品物を入れる箱にしまってしまった。
いつの間に、あっちへ行ったんだろう?。さすが陛下だよな。
なんで見えたって?
だってTVカメラがまわってて、お互いのホールの様子が見えるようになっているんだ。
だから…。
「ランディ…解説してる場合じゃないよ」
マルセルに言われてあたりを見回すと、
怒り狂った表情の3人がこちらに向かって芝を蹴散らし疾走してくるところだった。
「ランディっ!てめぇだなっ、こんなことしやがるのはっ!」
「お前の仕業だとわかってるんだぜ!レディを泣かせた罪は重いぞっ!覚悟しろっ!」
「そなたの所業は目に余る。そこへ直れっ!今日と言う今日は…。」
モニターの中、こちらを見ながら佇むクラヴィス様もこころなしか、いつもより恨めし気だ。
みんなモニターを見ていなかったのに、なんで俺だってわかったんだろう?。
「ランディ!!!」3人が俺に詰め寄る。
「みなさん…一罰ですね?。」ほわんとした口調でリュミエール様に言われて3人がどっと倒れ込んだ。
「あ〜、リュミエールもですよ。今、一罰って…ああ私も言ってしまいましたぁ。」
ルヴァ様とリュミエール様が和やかに微笑みあう隣でジュリアス様達はすごすごと帰っていった。
ほー。助かった…。
そんな調子で1ホール終わる頃には、俺は持ち切れないくらいのペナルティの品物を抱えていた。
リュミエール様が気にして下さったけど重くはないんだよな、かさばるだけで。
次のホールへ行くと、何か大声で話す声が聞こえてきた。
前の組のジュリアス様達だ。
あれからプレイが全然進行してなかったみたいだ。
「だっせー、ゴルフなんてやってられっかっ!…だよ。」
「ゼフェル!…くん。ジュリアス様に失礼だと思わんかっ!…な。」
「私には関係ないな…にこっ。」
「クラヴィス!言葉だけ笑っても、そなたの顔は一罰だ!と言うことなのだよ。」
みんなニコニコしながら、こんな話をしていた。
するとリュミエール様は嬉しそうに言った。
「みなさん、楽しそうで本当によかったですね。」
ピッキーン、そんな音が聞こえたような感じがして今度はジュリアス様達は凍りついた。
俺も丁度そう言おうとしてたのに、どうしてかな?
ともかくゴルフ大会は続行不能になり、次からは違うチャリティが催されることとなった。
空は青いし良い天気だ。
おしまい。
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水鳴琴の庭 銀の弦 ****