疑惑の人物
by真珠その日、商人はツイテいなかった。
店の側をリュミエールが通りかかってニッコリ微笑みかけ挨拶をしたのを見て
ふと、「この人って綺麗すぎるんやない?。ホンマは女やったりして?」
と思ってボーッとしていて客が来たのに気づかなくって売りそこなった。
おまけに、お得意さんで自分の口車に乗って何でも買ってくれる
アンジェリークがこなかった。
「あー、もうヒマやなぁ。なんかオモロイことないやろかー?」
あてもなく庭園をウロウロしていると
「あっ!エルンストさんやんか?どないしたんやろう?」
見れば一人でボサーっとお茶を飲んでいる。
「なんやーエルンストさん。ひとりでお茶ですかいな?色気もなんもあらへんなぁ。」
「な…なんだ。あなたでしたか。私は思索中なのです。
声をかけないでいただきたいですね。」
「なんやツンケンせーへんで欲しなー、袖すりあうもっちゅうやんか?」
と強引に同席してカップを頼むとエルンストのティーポットからお茶を注ぐ。
「……」
「どないしたん?エルンストはん。ああ、もったいないやんか残すつもりだったんやろう?茶」
「はぁ…かないませんね、あなたには。」
疲れたようにため息をつくと下をむいた。前髪もそれにつれてハラリとくずれる。
商人はクツクツ笑うとウエイトレスを呼んだ。
「でもケチやあらへんで、ねえちゃんタコ焼きたのむわ。ない?つかえんなぁ。ワテは客やでぇ。
定価の千倍出したるで買ってきーな、それが商売人ちゅうもんや。
お客様にはニコニコなんでもサービスや。」
商人はエルンストを見て、いきなり言った。
「あんたさん、リュミエール様の御親戚かいな?」
「まさか?まあ守護聖様の出自は知れませんから…でも何故ですか?」
商人はエルンストの前髪をツンツンひっぱった。
「これやこれ!なんか似たような色やんか?」
「そうですか?私のはリュミエール様と違って、もっとこう…くすんだブルーだと思うのですが?」
(
メモリアルブック2参照。でもカイリ先生の絵を見ると違う気がするの…真相はどうなのかな?)「そりゃそうやけど、まあだいたいそんなもんやない?」
「随分と大雑把な気がしますが…もう少し厳密に分析する必要があるのではないのでしょうか」
「そないな大袈裟なー。あんたもオモロイ人やなぁ。」
「……
(怒)。」大口を開けて笑う商人にエルンストはムッとした。
「でもなぁ、ここだけの話やけどな、あの人って男やと思います?」
「守護聖様なのですから当然でしょう。」
「ん〜でもなぁ、ちょっと綺麗すぎやと思わへん?」
「た…確かに男性とは思われぬ美しさをお持ちの方ですが…」
「そーやろ?なんや、あやしーでぇ」
「ですが、拝見したところ私達より上背がおありのようですし…」
「メルちゃんに聞いたんやけど前に飛空都市っつうとこで試験があった時は
メルちゃんのイトコのサラっちゅう占い師がおったんやそーや
それが185cmくらいあったらしいでぇ」
「お見受けしたところ火龍族には思えませんが…?」
ちっちっと指を振る。
「他にも女がデカイ星もあるかもしれんやろう?」
ガタッとエルンストは席を立った。
「わ…私が知らない事があるかもしれないということですかっ!」
エルンストはボウボウに燃え上がっていた。
「調査してみます!。必ずや真実を見つけ出してみせます。」
失礼っと言うとエルンストは商人が握らせた支払カードを持って猛然と研究院へと帰っていった。
その後ろ姿に片手でバイバイすると商人は体を折って笑い出した。
「かーっ!たまらん!マジメなんからかうとおもろいわー。
あの人マジでやるつもりなんやろか?。」
しばらくしてウエイトレスがゼーゼー言いながら持ってきた定価の千倍のタコ焼き
(
支払いエルンスト)を食べていると庭園の入り口にアンジェリークがやってきたのが見えた。
「あ、お客さんや、いらっしゃーい!。今日はきーへんのかと思いましたわ。」
ささっと店に戻る。
「商人さん、何かお話してください。」はにかんだ顔でおっとりと言う。
商人は心の中で
(こないにポーッとしてて女王になられても、その宇宙は大丈夫なんやろか?
)と思うが、もちろん顔には出さない。が、心の中にイタズラ心がわいてきた。
「そうやなぁ、他の人のことについてなんていいんやない?
誰の話をしたいんや?」
「あ…あの、リュミエール様のぉ…」
商人は、そういうと思っていた。彼女の好みは計算済みだ。
ちょっぴり内気で温和な彼女はリュミエール様にベタぼれなのだ。
商人は心の中でニンマリ笑った。
「リュミエール様のこと?うーん、そやなぁ…ここだけの話やけどな、あの人ホンマに男なのやろ…か〜?」
商人は皆まで言わぬうちに自分がアンジェリークに渾身の蹴りをくらって
空を飛んでいることに気がついた。
(
あかん…女の子の恋心を考えへんかったぁ〜っ)今日は、商人はツイテいなかった。
まぁ、ちょっと考えれば好きな人の性別を疑われれば
どんな女の子だって怒ることぐらいわかりそうなものなのだが
エルンストをはめたことで調子に乗りすぎていたのかもしれない。
ともかく商人は聖地の見えない外壁にぶつかるまで飛び続け
しばらく行方不明になってしまった。
しかし次の日の曜日には帰ってきて店を開いていたのは
まさに商人のカガミと言えるだろう。
研究院ではエルンストに妙な行動が見られるようになった。
リュミエールが自分の力がどれくらい必要か調べに来ると
来てから帰るまでジーッと凝視しているのだった。
「視線厳禁」につづく
真珠 |
なんかネタばれなカンジ (汗) |
ロゼ |
でも意外にリュミエール様は誉められてるのですわ。 |
真珠 |
そうそうエルなんか衿がどうこう言ってたから何言われるだろうって思ってたわ。 |
ロゼ |
衿はないしズルズルの服ですものね、リュミエール様。 |
真珠 |
でも何か外見ばっかりほめてない?。 |
ロゼ |
そうですわっ!リュミエール様は外見も美しいけど中身はさらに素晴らしいのですわ。 |
真珠 |
内面の美しさが外見までにじみ出てるってカンジよね。 |
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水鳴琴の庭 銀の弦 ****