雪をひとひら手に受けると儚く消えてゆく…

「俺は…ただの人間だ。女王様にとっちゃ、この雪より儚い存在だろうよ。

そんな俺になんで会いたがる?」

 

「そんなに泣くんじゃねぇよ。

お前の涙は暖かいな…あの時もそうだった。

消えようとしていた俺を暖め引き戻した。

だが、俺は…皇帝でもなけりゃ守護聖様でも聖地に呼ばれるような

お偉い奴らでもない…

そんな俺でもいいのか?

ただの旅の剣士アリオスで…。」

 

「お前…バカじゃねか…

俺なんかがいいなんてよ。

バカすぎて俺まで……」

 

「フン…お前じゃあるまいし

これは雪がとけたんだよ。

涙じゃねぇ。

お前の暖かさでとけた雪だ。」

 

「お前のおめでたさにゃ、この万年雪に覆われた大地も

とけて春になるだろうさ。」

 

「動くな…俺の腕の中で

俺の中に降り積もった雪も凍てついた氷も

とかしてくれ…。」

 

「鐘が鳴ってる…?

あぁ…これが『クリスマスクロス』の共鳴音か…

惑星が正十字を描く時に響くといわれる伝説の。

1000年に一度のその日が今日だったんだな。」

 

「もう0時だな

メリークリスマス…そう言うんだろう?

…フッ、やっと笑ったな。

ところで今日は宮殿でクリスマスパーティーなんだろう?

行くか?目を真ん丸くする奴らの前で

ダンスでも披露してやろうぜ。」

 

「…その後は…2人で…」

 

 

雪がやんで夜空と2人をオーロラが覆っていきました。