真っ白な光がほとばしって

レヴィアスがよろめいた。

 

何時の間にかリュミエールの腕に庇われるように包まれていた。

まわりを水のサクリアが守っていた。

そして受け入れ難い力を叩きつけられて

レヴィアスの力は弾かれ削がれていく。

「あなたを守ります。

そして、あなたを傷つけようとするのなら

私は…戦います。」

リュミエールの水の力は、ますます高まりレヴィアスが

九つの声で悲鳴をあげる。

アリオスも叫ぶ。

「待ってくれ!消し去らないでくれ、あいつらを!」

 

激しい力の潮流に翻弄されながら

無我夢中でリュミエールの首にすがりつくと

くちびるとくちびるをあわせていた。

 

力の強さはそのままに

激しい渦が緩やかなせせらぎに変わり

きらめく湖水の優しさをたたえた

全てを癒す輝きが

レヴィアスに吸い込まれていくと

クラヴィスが初めて闇のサクリアを開放した。

 

すると…

しだいにレヴィアスは形を失い、

白い翼をつけた九つの魂が、再び生まれ出るために

安らぎの地へと去って行った。

 

 

雲は晴れ、降るような星空にオーロラが舞っていた。

リュミエールはくちびるをはなすと

優しい海色の瞳で、瞳をのぞきこんだ。

「ありがとうございます。

あなたのおかげで、あの時どうしたら良いか

気づくことができました。」

もう一度、今度は優しく抱きしめられると

アリオスがポンと頭を叩いた。

「ちっ、借りが出来ちまったぜ。

この借りは…それよりアツアツのお前達の邪魔をしねぇことだな。

おっかねぇからな。

あばよ、いずれまた会うかもしんねぇぜ。」

アリオスは手を振ると

塔を降りて行った。

 

「…」

クラヴィスも静かに微笑むとゼフェルかかえて

塔を降りて行く。

「おい、何があったんだよ?オレには全然わかんねーぞ!

説明しろって、コラ!おっさん!離せ〜オレのスノーバイク置きっぱなし…。

だ〜!もう!オレのバイク乗ってもいいから持ってきてくれよ〜〜〜!」

怒鳴りつづけるゼフェルの声も

そのあたりで聞こえなくなり塔の上は穏やかな静寂に包まれた。

 

頬をリュミエールの綺麗な手が包むと

愛おしさをこめたくちづけが降ってきた。

天使の羽のような雪のごとく

甘くあわくとけてしまいそうな感触に

思わず涙がこぼれた。

遠くで美しい鐘の音が聞こえる。

「『クリスマスクロス』の伝説の鐘の音ですね。

1000年に一度だけ惑星が正十字に並ぶ時

共鳴しあって、あのような音が聞こえるのだそうですよ。

まるで結婚式の祝福の鐘の音のように聞こえます。

そして…

あなたはオーロラのベールをかぶった花嫁のようです。」

そっとリュミエールの腕に手をかけると

スノーバイクまでエスコートされた。

 

二人はバイクにのると

どこまでも雪原を走りつづけた。

満天の星空は大きなオーロラのコンサートホール

響く『クリスマスクロス』の鐘の音は

愛し合う二人の喜びの詩だった。